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海外派遣メンバー

海外派遣メンバー・インタビュー
#02

久保 尋之 助教

奈良先端科学技術大学院大学

インタビュー 2018年2月19日

物理に憧れた少年が、情報科学の研究者へ

子どものころ、東京・上野公園の近くに住んでいた。毎週末、近所の上野動物園か、国立科学博物館のどちらかに行くのが楽しみだったという。科学博物館では、恐竜とリニアモーターカーのコーナーがお気に入りだった。「模型と一緒に走って楽しんでいました」

高校生になって物理学の世界にあこがれた。「あらゆる自然現象を統一的に説明しようとする考え方がかっこいい、素粒子や相対性理論を研究しよう、と思っていました」

大学は早稲田大学理工学部の物理学科に進んだ。ところが実際に物理学の勉強を始めてみると、あこがれとは少しズレを感じ始めたという。素粒子は小さすぎて目に見えない。反対に、宇宙は大きすぎる。それよりも、自分が扱えるスケールの現象を手がけてみたいと思うようになった。同じ頃、人の心や脳の研究領域にも興味をいだき始め、大学4年で選んだのは、人の表情をCGで再現しようとしている研究室だった。

未踏の分野を切り開く、その感覚が研究の面白さ

皮膚が光を少しだけ通す具合を計算して、CGで人の肌の表現を本物に近づける。カメラを使って、物の素材の特性を計測する。そんな研究を手がけてきた。

研究の面白さは、新しい装置を使った撮影技術や、CGの開発によって、世界で、まだ誰も見たことのない映像を最初に作り出し、それを自分が目撃できることだ。未踏の分野を切り開く、その感覚だという。

研究者という仕事の幅広さにも魅力がある。ゲームや化粧品、映像制作などの会社の人たちと一緒に共同研究をした経験がある。様々な分野の人と仲良くなり、一緒に研究するうちに、それぞれの分野がかかえる技術的な問題点を知ることもできる。「世の中、うまく回っているように見えて、本当はここで困っているというような業界の舞台裏を垣間見る貴重な経験ができます。なかなかうまくいかないことが多くて難しいですが、その解決に自分が役立てたら嬉しい」

学生には、未知の課題に直面したとき、そこで生かせることを伝えていきたい

学生の教育にも関心がある。自身が博士号取得後2年間は大学を離れ、企業に勤務した経験を持つのが強みだ。「企業が動く原理と大学のそれとの違いや、社会が大学にもとめている教育の姿がどんなものか、おぼろげながらわかりました」

学生にアドバイスするときは、目の前の課題を解決するためだけでなく、もう少し長期的な視野を心がける。「学生たちが卒業した後に新たな課題に巡り合ったときに、そこで生かせるアドバイスができているか、いつも自問しています」。

学生たちの読み書きの力が落ちていることが気になるという。読むとは、専門の論文だけでなく、海外の文化や歴史を含めた広い教養を見につけること。書くとは、論理立てて文を書いたり、説明したりする力のことだ。

米カーネギーメロン大に滞在して研究しているとき、イスラム文化圏の友人とつきあっていて、他国の政治文化事情に疎い自分に気づいたのがきっかけだった。「共同で仕事や研究を進めるために信頼関係を築くには、理系の専門家であっても、広い分野の読み書きの力はとても大切です。そんなことも、学生たちに伝えていきたい」